ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

今日の一冊「雨の塔」宮本あや子

いつ買ったのか分からないけど、いつの間にか積ん読に加わっていた不思議な子。
なんか読む気がしなくて、いや、だったら何故買ったんだって謎なんだけど、
台風で気分がざわついて、今までに読んだことのない物語を読みたいのに買いにも行けないし、
そんな理由で今回初読。

読んだらより一層ざわついたわ。そんな気はしていたけど。
少女たちの繊細な、憧憬や嫉妬を交えた成長の物語かと思っていたら、全力の百合小説。
別に同性愛物が嫌いってわけじゃないけどね。むしろ普通の恋愛小説よりは好き。
でも台風の日に読みたい内容じゃなかったかな。面白かったけど。
篠突く雨、程度の日なら良かったかもしれん。

外界から隔離された全寮制の女子大で出会った四人の少女たちの物語だけど、
行き止まりの街の、そのまた奥にある学校で、人生まで押し込められた空間で、
上手く諦められた人間と、諦められなかった人間の、それぞれの心模様って感じで、
誰も何も成長しないし、何かが静かに壊れていくだけで、誰も報われなかったなって。
そんな感じの、釈然としないもやもやを楽しむ小説ってイメージ。

村上春樹小説もモヤモヤの代表格だけど、それとは違うんだよな。
主人公が村上作品ほど淡々としていないからか。
間違っても少女たちは「やれやれ」とは独白しない。
そして、変人奇人も、思わせぶりなヒントを呟く怪しい人物も登場しない。
彼女たちは、彼女たちだけで完結した世界に生きていて、
非現実的な環境なのに、現実からは逃げられない。

なんだかなー。みんな病んでたけど、壊れた人間と、そうはならなかった人間の
正常と異常の違いってなんだろうなって。
壊れた人間が、ある意味正常だったんじゃないかって思ったり、思わなかったり。