ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

今日の一冊「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹

また村上春樹を読んでしまったー。心がお疲れらしいわ。
でもこれは初めて読んだ。タイトルだけはもちろん知っていたけど。
「色彩を持たない」なんていうから、てっきり主人公が色盲なのかと思ってた。
全然違った。当然のことながら。

 

多崎つくるは仲間たちの中で唯一姓名に“色”を含まない。
そして、自分の外見にも性格にも特色が無いと自認している。
“色”を持たない多崎つくるは、存在価値すら無いのか?

透明には透明の存在意義があるし、
自分の存在感なんて自分には分からないものだよな、と思いました。

高校時代の、調和した世界。幼くて世間知らずで、閉ざされた関係。
私たちは、大人になる為に、どこかで必ずその世界が崩れると知っている。

失ったものや、もしくは奪われたものがあって、
その喪失を忘れようとして、忘れられたと思っていても、
歴史は消えたりしないんだよね。

なんだか高校時代を思い出して、メランコリックな気分。
タイミング悪く、極めて最近の大掃除中に高校の卒業アルバム見ちゃったのよ。

 

精神的に殴打されているけど、今までに読んだ村上春樹作品の中では好きな方。
村上作品にありがちな、メタファー的な要素を含んだファンタジー展開は無いし、
奇妙で辻褄の合わない発言をするような、突拍子もない登場人物もいない。

割と村上春樹が苦手という人にも読みやすいんじゃないかなぁ。
まぁ苦手という人にまで無理に勧めるような熱心なファンではないが。
初めて読んだ村上春樹がこれで、これでも苦手だと感じたのなら、
勧められる作品を私はまだ知らない、といった感じ。