ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

今日の一話「銀河鉄道の夜」宮沢賢治(新潮文庫「新編 銀河鉄道の夜」より)

唐突に宮沢賢治。作品集から「銀河鉄道の夜」だけ読んだ。

ドロドロした胸糞悪い話が読みたいと書いた翌日に賢治。
言い訳をしよう。
なんか突然、理由も無く昔読んだ本の内容が気になって、
衝動のままに検証してしまうことってあるよね。
まあそんな訳で今回、「銀河鉄道の夜」って夏の話だっけ、冬の話だっけ?
等と言う脈絡もクソも無い疑問に取り憑かれて検証したんです。

結果、秋だったわ。

カンパネルラが「もうすっかり秋だねえ」ってハッキリ言ってたわ。
そういえば車窓に竜胆とか咲いていたもんな。
白鳥座とか夏の大三角形関連の星座が出て来るから、夏なように錯覚してた。
冬かと思ったのは、カンパネルラの落ちた川が冷たかった気がしたから。

そしてちょっと大人になったお蔭で涙もろくなっているのか、泣いた。
電車で何の気なく読んでいたのに、途中から全力で涙腺引き締めて変顔してた。
マスク様々でしたわ。。

もちろん小さな活字だけの小説なのに、なんでこんなにキラキラしてるんだろ。
美しい光景を形容する時に、金剛石とか水晶とか鉱石で表現されているからかな。
他にもトパーズにサファイアムーンストーン等々、
様々な宝石の名前が出て来て絢爛豪華な比喩の世界。
銀河の水は、水素のように澄み切った透明な水って表現も独特なのに、
不思議としっかりと光景を描けるもんな。

ジョバンニとカンパネルラ以外の乗客たちとの会話も魅力。
どこから来たのかと問われて応えられなかった二人に、
「ああ、遠くからですね。」と雑作なく頷く鳥捕りの男のさりげない言葉が好き。

沈没する船から海に落ちて、気が付いたらここにいたという、
子供二人と家庭教師の青年との会話の中で、
「なにがほんとうのしあわせかわからないです。
 ほんとうにどんなにつらいできごとでもそれが正しいみちを進む中でのできごとなら
 峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから」
という言葉があるのだけど(発言者は彼らを慰める燈台守だけど)、
初めて読んだとき感動して何度も読み返した記憶がある。

そうだよなあ。そう信じて明日も頑張ろう。

今日の一冊「朝のこどもの玩具箱」あさのあつこ

さて11月!今年も残り二か月!!
なんて気づいてから、あっという間に3日になってて笑う。
11月に入ってから眠すぎて本が読めない。
いつもは移動の電車内で頑張って読んでいたんだけど。

今日の一冊はあさのあつこ
大学入ってすぐの頃にしばしば読んでいたけど、
社会人になってから何故か読まなくなった。
久々に読んでみたけど、やっぱりどこか青少年向けって感じがした。
なんかいい意味でも、物足りない意味でも、爽やかで軽いのよね。
特にこの短編集は全体的に性善説~って感じ。

読み始めたきっかけの「Np.6」の世界観は好きなんだけどな。
あれも児童書だったんだっけ。
最近はもっとドロドロして胸糞悪くなる話が読みたい。

今回読んだこれは、それぞれ独立した短編が6編入っている。
純文学的な内容からファンタジーやSFまで、バラエティ豊か。
でも全部あさのさんだなーって感じのお話。
たまにちょっと気持ち悪いけど、基本的に繊細な感じが。

一番好きな話は、「がんじっこ」だな。
気の強い頑固者、つまり「がんじっこ」なおばあちゃんと、
彼女に振り回される村役場の若い女性職員との交流が、
まあ有りがちでユートピア的な展開だけど嫌いになれない。
私もたぶん、「がんじっこ」なりたいだけかもしれんけど。

水辺のベンチシリーズ⑰ パイヒアの高台+ワイタンギに行った話

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曇り空なのはもったいないけど、PAIHIAのビーチの端っこにある小高い丘の上から。

マオリ語で「PAI」は「Good」という意味。

そこに英語の「Here」の音がついて「PAIHIA(ここは良いところ)」と呼ばれるようになったとか。

 

その名の通りのとても良いところでした。

北の果てを目指すための中継地としてだけの滞在だったけど、

リゾート感があり、穏やかな入り江のビーチも綺麗で、

連なる島々の光景も風情があって良かった。

f:id:Hitsuji-gumo:20211030195214p:plain この町の看板もカワイイ。

晴れれば青く澄んだ海がとても綺麗。

私は春先に行ったから泳げる気温じゃなかったけど(泳いでいる人はいたけど)、

真夏に海水浴に訪れても楽しそうだと思った。

 

町の辻々に芸術的なサムシングがあったのも面白かった。

 

PAIHIAの中心地から歩いて30分くらいのところに、ワイタンギという地があるのだけど、

ここは歴史的にとても興味深い場所だからPAIHIA観光の際は寄ってみてほしいと思う。

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ワイタンギ・トリ―ティーセンターのシンボル的な場所

私もワイタンギ・トリ―ティーセンターに行ったけど、ニュージーランドの歴史に触れられた。

先住民のマオリ族とイギリスとの間の不平等条約が結ばれた地で、植民地としてニュージーランドが在った時代について考えさせられます。(唐突に真面目)

二月にはワイタンギ・デーがあって、ニュージーランドの祝日で、マオリ族やその文化について考える機会がある。

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HAKAのショー

ラグビーのNZ代表のオールブラックスが試合前に踊ることで有名なHAKA。

色々な観光地でショーになっているし、ガイドの仕事で散々見たけど、ワイタンギのHAKAショーが一番楽しかった!

演者さんたち自身が和気あいあいと歌と踊りを楽しんでいるようで、観光客に見せ飽きているような商業的なホテルのショーとは全然違った(笑)

マオリ語の歌詞の中にワイタンギと地名が聞き取れたり、あとは初めてAOTEAROA(ニュージーランド)を発見した伝説のご先祖様の物語らしき内容が入っていたり、(そのご先祖様はワイタンギ辺りに上陸したとされている)

なんかご当地感があって、特別な感じがあった。

私がROTORUA周辺でショーを見る機会ばかりだったからかもしれないけど。

 

ま、内容についてはマオリ語でちんぷんかんぷんだから推測ですけども。

でもROTORUAでは聴かないメロディーだったことは確か。

 

滅多に日本人が行かない場所への観光も、女の一人旅でも安心なところがNZの一番いいところかもしれない。

今日の一冊「終末のフール」伊坂幸太郎

もう今月は伊坂作品しか読まない。
と思ったけど、もう十月終わるやん。。
一か月、というか今年一年速すぎて付いて行けない。
私はまだ2020年くらいに取り残されている気分。

この本もいつぞや映像化されていたんだよな。
でもストーリーとか別物そうで見なかった記憶がある。

終末のフール、というタイトルを見て、内容を知らずに買った私、
初読の始めに「週末」と「終末」を勘違いしていたことに気づく。
もっと牧歌的なというか、お父さんの休日ハプニングみたいなのかと。。
そんなことなく、間もなく隕石が衝突して世界が終わる設定でまず衝撃を受けた。

これは私がアホなせい。

だけど設定は設定だけど内容は意外と平和。
惨憺たる日常から、諦めの境地に至った人間たちが、
最後くらい静かに過ごしましょうよって、
仮初めなのかもしれない最期の平和を生きる感じ。
舞台は共通で、主人公が入れ替わるパターンの群像劇って感じだから、
短編集として移動中に読むのもいいし、
一気読みしてもそれぞれの繋がりがはっきり見えて面白い。

本当に終末が来ると私たちが知った時、そんな風に平和を見出せるのかな。
私はさっさと諦めて、崖から飛び降りてしまうかもしれない。
その前にサバイバル能力の欠如で生き延びれる気もしないが。

さりげなく最後に登場する、田舎暮らしを徹底している元俳優が、
人間のあるべき姿を示しているような気もするよね。
無駄な情報を断って、日々をただ一生懸命に生きていれば、
終末だろうが何だろうか日常の一日に過ぎない。

でも、この物語の登場人物は全員愛おしく思える。
生き抜いて、生きている感じが。フィクションだけど、頑張れって応援したくなる。
まあ、安全な場所からの無責任な応援なんて、何の価値も無いけどね。

今日の一冊「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎

開き直って伊坂作品祭りを始める三十路。
人生の半分以上フリークしてるからネタは豊富。
全作品を所蔵しているわけではないと思うけど。

これは、完全に独立した7編が収録された短編集。
プラス、インタビューも載っている。

この短編の中では、「一人では無理がある」が一番好き。
クリスマスとサンタクロースが伊坂作品に取り込まれると、
こんな風になっちゃうのか・・・(良い意味で)
って感じで面白い。
確かに、サンタクロースがたった一人ってのは無理があるし、
こんな形のサンタクロースなら、実在していても無理はないし、
面白いから実在していてほしい。
なんなら私もサンタクロースの一人になって働きたい。

「二月下旬から三月上旬」も好きだな。伊坂作品らしくて。
坂本ジョンなる変人がフラフラと現れて、
二月上旬から三月上旬の頃に事件を起こす。
どの時代もどの日も戦前で増税前だ、という社会的な発言も
なんか「魔王」世界線みたい。
まあ主人公は坂本ジョンに巻き込まれるだけで特殊能力も無ければ
世界と戦うこともないけど。

これは短い話が多いから、短時間の電車移動にもちょうど良いよね。
出勤に片道30分以上電車に乗る私にはちょっと足りないけど。

水辺のベンチシリーズ⑯ ピクトンの隠された入り江

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この写真もお気に入り。ピクトンの隠された入り江にて。

どこにでも咲いているこの小さな花が、とても好きだった。

一時期、この群生がある空き地の近くに住んでいて、通りかかる度に撮ってた。

実はめちゃくちゃ小さい花だから、頑張ってアップにしていた。



あー。ベンチぼかし過ぎてて初めの写真じゃ分かりづらいかな。。

ということで、これはベンチにピントを合わせたバージョン。

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こんなベンチで日がな一日読書でもできたら、最高の人生だよね。

今日の一冊「チルドレン」伊坂幸太郎

今月、ジブリ原作か伊坂作品しか読んでない気がする。
まあ凹みがちな一か月だったから仕方ないか。
本当に好きな小説しか読めん。

『チルドレン』も伊坂作品の中でも好きな方。
陣内君が最高だよね。我が道を貫く傍若無人さが。
初めて読んだときはまだ高校生で、大学生の陣内君もお兄さんだったのに、
今では10個も年下の男の子。悲しみ。

これは陣内君を巡る短編集といった感じで、
様々な主人公がそれぞれの視点から陣内君によって引き起こされた、
そして巻き込まれた事件について語っていく。
学生時代から、社会人になり、家裁調査官になった陣内君まで、
彼が一人称で語ることはないのに、陣内君の珍歴史を見られる。

銀行強盗も登場するし、初期の伊坂作品らしさが詰まっている気がする。
生まれつき目が見えず、盲導犬を連れている永瀬君も主要登場人物だけど、
目の見えない彼が、一番物事の核心を見ている感じも好き。

陣内君が自作した、トイレの名言集(迷言?)が欲しい(笑)