ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

今日の一冊「宵山万華鏡」森見登美彦(集英社文庫)

森見作品にハマったきっかけの一冊。
高校時代に「太陽の塔」だったか何だったかで一度読んでいたけど、
あんまり印象に残っていなかった。
大学時代にこの「宵山万華鏡」を読んでスコーンっとハマった。

次に読んだのが「夜は短し歩けよ乙女」だったことも良かった。
早期に「四畳半」系の小説を手にしていたら、
くすぶった男子大学生の妄想に付いて行けなくて
ハマらなかった可能性があるからね。

宵山万華鏡」は群像劇な短編集のようで、全部繋がっている。
宵山の夜は全て繋がっているから。
この不可思議で薄暗い怖さを孕みつつ、でもユニークな登場人物たちに彩られて
京都の伝統的な祭りの夜を舞台に物語は展開していく。

全ての物語を軽やかに駆け抜ける、金魚色の浴衣を着た少女たちは、
可愛いようでいて不気味だ。

でもそれぞれの物語の主人公から脇役まで、軽妙な会話や語り口もあって
怪談を読んでいるような恐ろしさはほぼ無い。
特に「宵山金魚」から「宵山劇場」に登場する、
乙川氏と藤田君や山田川女史と小長井君の会話は、森見作品らしさが満載。
宵山金魚」のハチャメチャぶりは思わず読みながらクスクス笑ってしまう。

それから「宵山回廊」「宵山迷宮」と主人公が移っていく中で、
段々と薄暗い、抜け出せない恐ろしさがジワジワと現れて来る。

そして最後の「宵山万華鏡」でザーッとハチャメチャだった展開すらも回収して、
怖さと、怖さから逃れた安堵と、でも実は宵山はずっと続いているんじゃないか、
という不穏な疑惑を残して、本を閉じたあとも余韻に浸れる。

あーっ。森見さん読むと京都に行きたくなるんだよなーっ!!
聖地巡礼したい(笑)