ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

昨日の続き「少年探偵団」(新潮文庫)

珍しく予告通りに江戸川乱歩
昨日はコナン君を思い起こしていたけど、
こっちはもっとマイナーな「夢水清志郎シリーズ(はやみねかおる)」を想起した。

なんだっけ。そして五人がいなくなる、だっけな。
マジシャンが黒い気球で飛んでいくやつ。
オマージュというか、まんま同じだったよね。

しかし怪人二十面相のユニークさは他に類を見ないというか。
明智小五郎的な名探偵はよく物語の世界で
(はやみねかおる的にいうと、赤い夢の世界、かな)
まま見かける人物だけど。
黄金製の塔を盗み出すエピソードの中で、
『黄金の塔そのものは、さほどほしいとは思わなかった』けど
『噂に高い厳重な防備装置に引きつけられ』て、
『まんまと塔を盗み出して、世間をアッと言わせたい』
という二十面相君らしさを表した文章があるのだけど、
このキャラクター性がいっそ芸術的で愉快。

明智探偵の裏をかいて、裏の裏をかかれて、裏の裏の裏の・・・
って感じで、次々と(とんでもねえな)って内心で呟かざるを得ない展開があって、
さすが戦前の冒険小説って感じの強引なストーリーも逆に斬新。

私が持っている文庫は原文ほぼそのままらしいから、
現代では差別用語とされる表現も散見されるけど、
内容だけなら確かに子供にも読ませたい。読書の楽しみを知れるわ。
しかし差別ともちょっと違うけど、初めに出て来るおじさんの印度人への偏見が凄い。
彼曰く、印度人は『今地面に種を撒いたかと思うと、見る見る、それが眼を出し、茎が延び、
葉が生え、花が咲くというようなことは朝飯前にやってのける人種』らしい。

現代なら考えられない表現で、そんなところも面白いと思うポイントだわ。