ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

今日の一冊「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎(新潮文庫)

やっと有言実行できた。
お久しぶりです、黒澤さん!(笑)
しかしこれは独立した4つの物語の短編集だから、全部に黒澤さんがいるわけではない。

・動物園のエンジン
サクリファイス
・フィッシュストーリー
・ポテチ
の4編から成るんだけど、それぞれ感慨深くて甲乙付けられない。
でも強いて一番好きなのを選ぶなら「ポテチ」かなぁ。
「フィッシュストーリー」も好きだなぁ。←選べてない

 

「動物園のエンジン」は「ラッシュライフ」の前日譚って感じ。
そして「オーデュボンの祈り」の主人公も一瞬登場している。
もちろん独立した話として楽しめるけど、
その前二作を読んでいた方が楽しいと思う。
初めてタイトルを読んだとき、まさか「動物園のエンジン」が
一人の人間を指しているとは思わなかったよね。
これ読むと動物園に行きたくなるんだよな。
横浜の野毛山動物園なら無料で入れるし、近々行こうかな。

 

サクリファイス」は黒澤さんが主人公のお話。これが読みたかったんだ。
プロの泥棒で副業が探偵の黒澤さんが、とある辺境で事件に遭遇するストーリー。
もはや設定だけで面白いことが保証されている。
まあ事件自体は悲しい過去に通じているから、ちょっとシュンとするけど。

 

本のタイトルにもなっている「フィッシュストーリー」は、THE☆伊坂ワールドって感じで爽快。
フィッシュストーリー=ほら話なんだけど、風が吹けば桶屋が儲かる方式で、
その「ほら話」が世界を救っていく。
最初の風を吹かせたのが、売れないロックバンドの叫びってのも面白いよね。
この歌は誰かに届いているのか、ってか届いてくれよ、という青臭い祈りが巡り巡って世界を救うんだよ。

 

「ポテチ」は、黒澤さん再登場。主人公は今村君だけど。
今村君も好き。リンゴが降ってきて万有引力の存在に自力で気が付いたミスター・ニュートンであり、
たまたま紙に書いた三角形で、三平方の定理を発見してしまう、
あと三百年早く生まれていたら天才だった、愛すべき残念なアホの子、と見せかけて!
見せかけて!天才的に優しい青年なんですよ、これが。
まさか塩味のポテチが、後からあんなに深い意味を持つなんて、ねえ。
私の好きな長編の「重力ピエロ」ともリンクしているし、やっぱりこれが一番かな。