ひつじの部屋

多趣味・多経験を活かしたい

五十音順に自宅にある本を読んだら、伊坂幸太郎が絶壁になって立ちはだかると気づいた日

本棚の本を、五十音順に読んでいこうかと思って並べ替えてみた。
ついでに何冊あるのか数えればよかったな、と後の祭り。
五百冊くらいあったのかな。全部小説ってのがすごいな。
かなり埃っぽかったから、今度晴れたら虫干ししつつ数えよう。

でも五十音順に読むにしても、ア行だけで死にそう。
一時期嵌っていたあさのあつこいしいしんじ奥田英朗
それぞれ十冊以上ずつあるし、
永遠に嵌っている伊坂幸太郎がザックリ三十冊は超えている。
しかも伊坂さんに至っては文庫化が待てずに半数以上がハードカバー。
気軽に持ち運んで電車で読めないタイプ。

伊坂フリークのきっかけはよく覚えている。
高校二年の時、長期休暇か三連休の前、図書室で何の気なしに
「オーデュボンの祈り」と「ラッシュライフ」を借りたんだ。
作家名も知らなかったし、たまたま目に付いたから、みたいな理由で。
未だに並んでいた棚の場所まで覚えている(笑)

出版順にまずは「オーデュボンの祈り」から読んだんだけど、
当時16歳の私には、こっちはそんなにピンとこなくて、
あー、この作家さん二冊も借りなくてよかったかなーなんて思った。
のに。
ラッシュライフ」で落ちた。それはもうラブストーリーの如く突然に。
もうね、これは恋と言っても過言ではない。いや恋なんて言葉じゃ生ぬるいかもしれない。
華麗なる伏線回収ってやつに兎にも角にも感動したのと、登場人物の黒澤さんに惚れた。
名言が多いのよ、この人。
「人生については誰もがアマチュアなんだよ。(中略)はじめて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ。」
という言葉を読んで、苦労の多かった十代の私は泣きそうになった。
いや今考えるとこれ読んで泣きそうになる女子高生って、私かわいそうだな!?

この黒澤さん、かなり人気キャラで別作品で主人公にも昇格しているし、
他の作品にも度々登場するから、一時期は黒澤さんの追っかけみたいな感じで
もはや黒澤さんを探して伊坂作品を読んでいた。

あと、さり気なく物語をリンクさせてくる作品が好きなんだけど、
ラッシュライフ」の中にも「オーデュボンの祈り」の主人公を示す会話があるのよね。
別に前作を読んでなくても全く問題ないレベルなんだけど、
読んでいると、お前さんあの時の彼か!ってなる感じが好き。

「オーデュボンの祈り」はミステリーなんだけど、ファンタジーな要素もあって、
(なんてったって、未来が見えるカカシが喋っているんだから)
そこがイマイチ好きになれなくて。
ミステリーならばリアリティが欲しいタイプなので、いや有り得ネーって設定はちょっとねぇ。

ラッシュライフ」はね、全然違った。
途中、バラバラ死体が歩き出して、これホラー小説でしたっけってゾッとするけど、
最後にその原因・理由も回収されて、やっぱり一番怖いのは生きた人間だわ!ってなる。
黒澤さん以外の登場人物たちの濃さも良い。
一瞬しか登場しない、拳銃を持った強盗老夫婦が好き。
強盗すらも「人生の充実ですよ」って飄々と笑うイカれっぷりが好き。
他にも、解体される神様を描く悩める画家の青年とか、お互いの配偶者の殺害を企てる不倫カップルとか
犬を拾ったリストラ中年とか、背景が濃すぎる彼らがバラバラに物語を紡いでいって、
最後に一つの真実に帰結する怒涛の展開が、もう快感でたまらないんですよ。

あと、伊坂作品のいいところは、勧善懲悪なところ。読んでスッキリする。全部じゃないけど。
悪い奴の裁かれ方が、逮捕されるとか単純な司法の問題じゃなくて、
再起不能なくらいに精神まで叩かれるところが良い。
そして頑張っている真っ当な人間がちゃんと報われるところも良い。
それこそファンタジーじゃねぇか、とか言うんじゃない!私の心の声!

ラッシュライフ」は伏線回収の見事さでスッキリするけど、
勧善懲悪でスッキリするのなら、「陽気なギャング」シリーズのがオススメかなぁ。
ある種の超能力のある人たちが出てくるから、ファンタジー要素なのかもしれんけど
それも伊坂作品らしさで気にならないし、そもそもミステリーではなくサスペンス?
コメディ要素もあるし、だから有り得ネーって設定でも、それが楽しい。

 

また黒澤さんに会いたくなってきたので、明日ガッツリ読み返そうと思います!