今日読んだ本「風の歌を聴け」村上春樹
気分が沈んだとき、もっと深くへ沈みたいときは村上春樹を読む。
精神的にマゾヒストなときもあるよね。無い方がいいけど。
村上春樹を読むと、思考回路が淡々として、タバコをくゆらせたくなる。
「風の歌を聴け」ってデビュー作だったんだね。知らんかった。
1982年に初版ってことにもびっくり。昭和!
私が持ってた古本は1998年の第53刷で、たぶん買ったのは2010年くらいで、
そして今は2021年という事実。この本単体で十分な物語を持っていそう。
たった150ページと少しの小説の中で、何かが始まった気もするし、何も始まらなかった気もする。
何かの喪失についての話のようで、そうでもないようで、
出会いと別れとか、そんな単純な話じゃないんだけど、確かに出会いと別れもある。
なんだかな、釈然としない感じが、村上春樹だなぁって感じ。
あらすじとかネタバレとか、書きたくないんだよな。だって読んでほしいもの。
もうすぐ30歳になる男が、自分の学生時代のある夏の出来事を語っている、それだけ。
その頃に得たものや、今は失ってしまったものについて、懐かしむでもなく、ただ淡々と。
私には学生運動のデモとか、携帯電話の無い時代の学生のことなんて分からないけど、そんな時代も生きてみたかったな。
東京タワーがどんどん伸びていくような、エネルギーが充満していた時代って、ちょっと憧れに似た何かを感じるよね。
生まれたときにはバブルが崩壊していた平成生まれだから。
何度か読み返したフレーズは、
「泣きたいと思う時にはきまって涙が出てこない。そういうものだ。」
もうさ、これだけで村上春樹だなぁって感じする、よね。
この、「そういうものだ。」って諦観が。